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福岡高等裁判所 昭和26年(ラ)16号 決定

原決定は所得税その他の公課を差押債権者の債権に先だつ不動産上のすべての負担であるとして、民事訴訟法第六百五十六条第二項の手続をなしたが、所得税その他の公課は不動産そのものを課税物件として賦課されたものでないから、いわゆる「不動産上の負担」でないことは学説の一致するところである。このことは、同法第六百四十九条の精神からしてそうであるばかりでなく、国税徴收法が国税その他の公課を強制執行費用に先だちて徴收しない旨規定しており、従つて民事訴訟法による強制競売を許していることが明かである点からいつても疑の余地がないであろう。原決定は「不動産上の負担」について、解釈を誤つた違法がある。よつて、その取消を求める。

というのである。

民事訴訟法第六百五十六条の規定は同法第六百四十九条の規定につながるものであり、第六百四十九条第一項には「差押債権者の債権に先だつ債権に関する不動産の負担」とあり、第六百五十六条第一項は「差押債権者の債権に先だつ不動産上の総ての負担」とあつて、この「不動産上の負担」とは、「競売不動産が負担している債務」換言すれば「競売不動産によつて担保されている債権」を意味することは、抗告人所説のとおりである。すなわち、差押債権者に優先する物上の負担であつて、且つそれが競落によつて消滅すべきものと定められた担保権者の債権を、競落代金を以つて弁済して余剰のないときは売却をなし得ないと定めたのが第六百四十九条第一項であり、右のようにいわゆる余剰主義を採つているところから、最低競売価額がすでにこれに不足である場合の処理を定めたのが、第六百五十六条、第六百五十七条の規定である。

しかして、国税その他の公課債権は、納税義務者の総財産の上に先取特権を有するのであるから(国税徴收法第二条、地方税法第十五条)納税義務者が強制競売事件の債務者である場合、その賦課されている「公課」は、競売申立の目的不動産を課税物件としたものであると否とにかかわらず、すべて「競売不動産上の負担」であるといわなければならない。それ故に、公課主管官庁に対する債権申出の催告を定めている同法第六百五十四条に「その不動産に対する債権の有無」と規定しているわけであつて、この意味は「競売不動産の所有者に対する債権の有無」と解すべきものである。

以上説明のように、原決定には所論のような違法はなく、論旨こそ公課債権の先取特権を看過した過誤を犯しているものといわなければならない。なお、抗告人所説の強制執行費用の優先権は、国税(国税に対する附帶債権を含む。)の先取特権に対する例外として、第三者が納税義務者に対してなした強制執行に関するものであつて、前記説明に何らの関渉もない。

よつて、本件抗告はその理由がないものとして、民事訴訟法第九十五条、第八十九条に則り、主文のように決定する。

(裁判官 小野謙次郎 桑原国朝 中園原一)

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